廊下を歩く数秒の道程に由つて、已に完全な、社交家としての笑顔に移り得る彼は、しかし不幸にして、(実に不幸にして――)、私の気持を、決して計算の中へ入れやうとはしなかつた。
そのために、益々不快の念を加へずにゐられぬ私は、「怒り――敷居――笑ひ」といふ甚だ自分勝手な彼の計算を、それ故彼の存在を、最も強い憎しみを以て遇せずにはゐられなかつた。
「お邪魔ではありませんか――」
廊下を歩く数秒の道程に由つて、已に完全な、社交家としての笑顔に移り得る彼は、しかし不幸にして、(実に不幸にして――)、私の気持を、決して計算の中へ入れやうとはしなかつた。
そのために、益々不快の念を加へずにゐられぬ私は、「怒り――敷居――笑ひ」といふ甚だ自分勝手な彼の計算を、それ故彼の存在を、最も強い憎しみを以て遇せずにはゐられなかつた。
「お邪魔ではありませんか――」