そのために、益々不快の念を加へずにゐられぬ私は、「怒り――敷居――笑ひ」といふ甚だ自分勝手な彼の計算を、それ故彼の存在を、最も強い憎しみを以て遇せずにはゐられなかつた。
「お邪魔ではありませんか――」
私は苦りきつて、忌々しげに横を向いてゐるのであるが、すると彼は、私の如何なる苦々しい面相に向つても、常に一種の全く目的の不鮮明な薄笑ひを浴せることを怠らずに、(それは全く冷笑とも微笑ともつかないものであつたが――)、その余りの手応への無さに、その余りの不快さと無意味さに、絶望へまで、私を、導かずにはおかなかつた。