私は、折にふれて思ふのであるが、斯の様に殴り通しの、斯の様に殴られ通しの夫婦といふものは、極く稀にしかあるまいと思はれるのだ。
立派な個性を持つた女が、寧ろその亭主よりも聡明にさへ見える女が、一つの悲鳴さへあげやうとせずにただ殴られてゐることは、同情に価ひするよりも、寧ろ不愉快に価ひするものである。
私はせめて、彼等の喧嘩が、何等かの甘さを以て終ることを私かに期待するものであつたが、その事は全く無くて、妻君は常に殴られ、笛六は常に殴つて一日を終つた。
私は、折にふれて思ふのであるが、斯の様に殴り通しの、斯の様に殴られ通しの夫婦といふものは、極く稀にしかあるまいと思はれるのだ。
立派な個性を持つた女が、寧ろその亭主よりも聡明にさへ見える女が、一つの悲鳴さへあげやうとせずにただ殴られてゐることは、同情に価ひするよりも、寧ろ不愉快に価ひするものである。
私はせめて、彼等の喧嘩が、何等かの甘さを以て終ることを私かに期待するものであつたが、その事は全く無くて、妻君は常に殴られ、笛六は常に殴つて一日を終つた。