その安心に唯一の救ひを見出すよりほかに詮方ない私は、その時、いそがわしく手繰り出す古い写真のやうにして、甘い幻を描き出すことによつて、何事をも忘れ去らうとするのである。
私は、病院の前にゐるのであつた。
その径は、坂が降らうとする高台の端れにあつて、一方は下に展らける谷底の街へ、一方は、塀のみ長く続いてゐる木立の深い一廓へ、静かに流れてゐるのであつた。
その安心に唯一の救ひを見出すよりほかに詮方ない私は、その時、いそがわしく手繰り出す古い写真のやうにして、甘い幻を描き出すことによつて、何事をも忘れ去らうとするのである。
私は、病院の前にゐるのであつた。
その径は、坂が降らうとする高台の端れにあつて、一方は下に展らける谷底の街へ、一方は、塀のみ長く続いてゐる木立の深い一廓へ、静かに流れてゐるのであつた。