かなり大きいのでオフィスかと先づ思つたが、いやいや、之はアパアトであると直ぐ先生は判断を改めた。
勿論一つとして燈りの洩れようとしないその建物を見上げ乍ら先生は近づいてきて、いよいよ建物の前に差しかかると不思議に入口が開け放してあつて――おや開け放してあると思つた時には入口の前を通り過ぎてしまつてゐたが、たしかに開け放しであると思つた。
ところが建物の中央にある正面入口に来かかつたので今度は良く見ると、それは併し余りにも堅く閉されてゐて、上に取りつけられた門燈がひどく間の抜けた光を扉の背面へ鈍く滑らせてゐた。