暫くしてから、腹部に針金のやうに張つてゐた棒みたいのものが漸く少し弛んできたので、引きずるやうな足を曳いて逃げようと焦つてみた。
どうにでもして逃げ出したいと焦つたけれど、さういふギゴチない身体のもどかしさと同時に、もうどうすることも出来ないのだといふ絶望が火の玉のやうに胸に籠つて、やがてそのへんの肉が粉のやうに砕けてゆくのが分つた。
先生は絶望のしるしに手で頭を抱へようとしたが、うまく頭を押へることが出来ずに、手は大きな波のうねりとなつて頭の前後左右へグラグラとだらしなく舞ひめぐり、しつかと押へることが出来ないのであつた。