心に泛ぶこともないので、明日からは断々乎として訪問を止さうと、私は頻りに其の愉しさを思ひはぢめるのであつた。
すると鋭敏な辰夫は勝れた神経で忽ち私の胸中を推察し、別れ際には尚劇しく慟哭して、「迷惑だらうけれど明日も又、ね。
君が来てくれないことになると僕は夕暮れを待つ力も失つてしまふ……」さう言ひ乍ら思ひがけない強い力で私の手首を握るので、その突瑳に私ははや明日の負担にフラ/\し乍ら、長い廊下を消え去るやうに歩きはぢめるのであつた。
心に泛ぶこともないので、明日からは断々乎として訪問を止さうと、私は頻りに其の愉しさを思ひはぢめるのであつた。
すると鋭敏な辰夫は勝れた神経で忽ち私の胸中を推察し、別れ際には尚劇しく慟哭して、「迷惑だらうけれど明日も又、ね。
君が来てくれないことになると僕は夕暮れを待つ力も失つてしまふ……」さう言ひ乍ら思ひがけない強い力で私の手首を握るので、その突瑳に私ははや明日の負担にフラ/\し乍ら、長い廊下を消え去るやうに歩きはぢめるのであつた。