すると此の部屋は痛々しい硝子張りの窓ばかりだが、それを通し、何もない庭の土、鈍重な冬の光を冷え冷えといぶしてゐる黒く侘しい土肌と、それを越えて一棟の病室が覗かれ、檻の中では病人達の蠢めく様が眺められた。
彼等は演説をしたり、けたゝましい笑声を発したり、呂律の廻らない破れさうな流行唄を喚いてゐる。
私は此処へ坐らされた瞬間からもう煙のやうな私、掴まへどころのない憂鬱と不安とに怯えきつて縮んでゐた。
すると此の部屋は痛々しい硝子張りの窓ばかりだが、それを通し、何もない庭の土、鈍重な冬の光を冷え冷えといぶしてゐる黒く侘しい土肌と、それを越えて一棟の病室が覗かれ、檻の中では病人達の蠢めく様が眺められた。
彼等は演説をしたり、けたゝましい笑声を発したり、呂律の廻らない破れさうな流行唄を喚いてゐる。
私は此処へ坐らされた瞬間からもう煙のやうな私、掴まへどころのない憂鬱と不安とに怯えきつて縮んでゐた。