一日私は広茫たる水田のほとりへ辰夫を訪れた。
折悪しく辰夫は社用で不在だつたが、あの神経質な又冷淡な母親を予想してゐた私は、そこに全く思ひがけない物静かな、その温顔に神へのやうな深い感謝を私に浴せる老いたる母を見出して呆然としてゐた。
私は田園の長い夜道を辿り乍ら、改めて歎息に似た自卑と共に、世に母親ほど端倪すべからざるものはないと教へられた。
一日私は広茫たる水田のほとりへ辰夫を訪れた。
折悪しく辰夫は社用で不在だつたが、あの神経質な又冷淡な母親を予想してゐた私は、そこに全く思ひがけない物静かな、その温顔に神へのやうな深い感謝を私に浴せる老いたる母を見出して呆然としてゐた。
私は田園の長い夜道を辿り乍ら、改めて歎息に似た自卑と共に、世に母親ほど端倪すべからざるものはないと教へられた。