坂口安吾 『Pierre Philosophale』 柔らかな風が吹いてゐた。 無の稀薄さに撒きちらされた心さへ野獣の興奮で白日を歓喜し、熱狂に疲れて、呂木は自分の影を愛した。 音の死滅した夜更けの駅路で、ふやけた電燈の下へ左手をかざし、長いあひだ呂木はその手を眺めてゐた。 坂口安吾の名言・名文を読む 用例を検索する → シェア