無の稀薄さに撒きちらされた心さへ野獣の興奮で白日を歓喜し、熱狂に疲れて、呂木は自分の影を愛した。
音の死滅した夜更けの駅路で、ふやけた電燈の下へ左手をかざし、長いあひだ呂木はその手を眺めてゐた。
そして、やつれた手を貪るやうに嗅ぎ嗅ぎして、そのあくどい人間臭に無心な悦びを覚えてゐた。
無の稀薄さに撒きちらされた心さへ野獣の興奮で白日を歓喜し、熱狂に疲れて、呂木は自分の影を愛した。
音の死滅した夜更けの駅路で、ふやけた電燈の下へ左手をかざし、長いあひだ呂木はその手を眺めてゐた。
そして、やつれた手を貪るやうに嗅ぎ嗅ぎして、そのあくどい人間臭に無心な悦びを覚えてゐた。