といふ書き出しではじめられた「心暖き夕」は、さてハメを外した恋に理性を求める習慣のおかげですつかり顔付がいんきになつた大学生が、彼の父親であるK先生の奉職してゐる商業補習学校で、一夜人手が足りないために俄か先生になることになつた。
ところが時間が少し早かつたので、いんきな大学生は夏の宵の街を散歩して、ビヤホールの明るい窓から四人の人物が丸卓を囲み、女給がおあいそを言ひながら酌器を注ぎ廻るのを眺めたりして、「こんな風に楽しんでゐるのか」と呟いたりしたが、時間が切迫したので急ぎ足に河岸の通りを歩いていつた。
さて大学生が教員室に現れたとき、