けれども其の教会では矢張り其処では其処なりに全ては此の男の柄にはまつて見えたかも知れなかつた。
いはば彼は、同じ彼が事務所の机に向つてゐても留置場の中にゐても料理店のコックであつても乃至は総理大臣であつてさへ極めて自然に其れは其れにしか見えないやうな、単に全ての現実が全ての現実でしかないやうな、「常に凡ゆる断片」とでも呼ぶべき男であつたかも知れない。
併しこれだけは断つておくが、彼は一度も神を信じたことはなかつた――ないやうであつた――にちがひない――尤もこれは取立てて言ふほど重大なことでもなささうである。