時々は内心さうすることをてれながらも、看抜かれたものをわざと誇張して振舞ふのであります。
かういふ青年のふてぶてしさは此の人の余儀ない傾向でほかに他意はなかつたのですが、これが娘の父親を苦しめる種になるのでした。
内心人の思惑を気に病むたちの娘の父は己れの秘密の眼力が風のやうにたあいもなく青年の勘に伝はつてしまふことも心外であつたが、看破られた心を隠さうとしない青年の態度が己れの弱身への挑戦に思はれ、この年寄はたかが人間の裏の複雑な心さへ容れることのできない小人物にすぎないのかと、暗に斯様な嘲弄をほのめかしてゐるやうに思はれて逆上を覚えずにゐられなくなるのです。