これは青年の先輩に当る夢に富んだ一哲学者がこの草原に牛を飼ひ、自ら牛の王様となるために設計したものですが、この夢を実現しないうちに山を降り、いはば彼は貧乏に負け、夢に富んだ小屋をのこして片田舎の教壇へ逃げなければならなかつた、その遺跡は今も尚歴然と形を存してゐるのでした。
青年は夢に崩れたこの山小屋を強姦の目的の場所に選んだのです。
この丸太小屋へ行くためには青梅電鉄の一駅に下車し、多摩川を渡つてのちその流れに沿ふて歩くこと一里近く、鬱蒼たる木陰に狸をまつつた祠のあるところから谷川に沿ふて山径を登るのです。