木暮山中腹の八段歩の草原までよぢのぼる難路のあひだ、青年はめくるめく想念の断続のために遂に一言も発することができませんでしたが、初夏の光燦然たる緑の草原へ現れでたとき、彼の胸に発止と突き当つた想念は矢張り強姦を遂行せずに山を降ることは決してできないといふ片意地な決意だつたのでした。
草原の丸木小屋は屋根の下約八坪の面積があるのですが、その半分即ち四坪は単に柱によつて屋根が支へられてゐるだけの吹き曝しの土間であります。
この土間には一ヶ所に穴がうがたれ、この上に自在がかけられてあつて、即ち言ふまでもなく此の家の台所でありました。