青年も全くうはの空になりました。
彼らが小屋の中へはいつたとき、即ち遂に光の眼から遮断されてしまつたとき、さうして造りつけの板椅子の上へなんとなく腰を下してしまつたとき、横に並んだ肉体と肉体の間には一尺以上の距りがあつたにも拘らず、娘の体温が最も精妙な感官を通して全て吸ひとられてくる如く、青年の官能は燃え狂ひ、激流となり、もしも一つの緊張が破れたなら物凄い息吹きとなつて迸りでるかと思はれました。
来る途まで心に強く描かれてゐた精密な淫画の断片が現れるかと見えて消え、一言発すれば全て済むはずの言葉が頭を掠めて流れ去り、娘の身体に手をかけさへすれば万事終るべき筈のわづかに一尺の動きが、その動きを思ひだすときには逆に一尺縮むやうな不可抗力を覚えます。