相当に運動神経が発達してゐるから、二三間空中に舞ひあがり途中一回転のもんどりを打つて落下したが、それでも左頭部をコンクリートへ叩きつけた。
頭蓋骨に亀裂がはいつて爾来二ヶ年水薬を飲みつゞけたが、当座は廃人になるんぢやないかと悩みつゞけて憂鬱であつた。
こんな話をきくと大概の人が御愁傷様でといふやうな似たりよつたりの顔付をするものだが、ところがこゝにたつた一人、私がこの話をしかけると豆鉄砲をくらつた鳩のやうに唖然として(これは喋つてゐる私の方も唖然とした)つづいて羨望のあまり長大息を洩らした男があつた。