「顔を拭いて――」
と忍の叫ぶ声なぞも耳にはいらぬのであらう、ただ夕空の蟇のやうに階段を這ひ登つていつた。
草吉はその後ろからついていつたが、汚いものをつけたのか、汚物を漏らしたのか、とにかく悪臭の堪えがたいものがあり、それが草吉の朦朧と痺れた頭に、人の死生喜怒哀楽は汚物の悪臭芬々たるが如く卑小にして醜しといふ感を与へた。
「顔を拭いて――」
と忍の叫ぶ声なぞも耳にはいらぬのであらう、ただ夕空の蟇のやうに階段を這ひ登つていつた。
草吉はその後ろからついていつたが、汚いものをつけたのか、汚物を漏らしたのか、とにかく悪臭の堪えがたいものがあり、それが草吉の朦朧と痺れた頭に、人の死生喜怒哀楽は汚物の悪臭芬々たるが如く卑小にして醜しといふ感を与へた。