ほんとに苦しくはないのか、医者をよぶ必要はないのかと草吉が尋ねると、ほんとに苦しくないのだ、お午まで静かに睡むつてゐたいのだと答へ、やがて顔から蒲団をとりのけて、正しい寝息をたてながら睡むりはじめた。
そのときもはや夜は白々とあけはじめており、まだ太陽は昇らなかつたが、仄かな薄光が当太郎のよごれた顔にもかかつてゐた。
草吉がはじめて便所の戸をひらいたとき、さうしてそこに当太郎の屍体を見出したとき、彼の胸をまづ流れたものは、ここにも一人の愚かな奴、それがまさしく便所の中にころがつてゐるやうに一匹の息絶えた巨大な蛆虫、さうして、なんといふうるさい出来事であらう、といふ考へだつた。