草吉がはじめて便所の戸をひらいたとき、さうしてそこに当太郎の屍体を見出したとき、彼の胸をまづ流れたものは、ここにも一人の愚かな奴、それがまさしく便所の中にころがつてゐるやうに一匹の息絶えた巨大な蛆虫、さうして、なんといふうるさい出来事であらう、といふ考へだつた。
ところが当太郎の生き返つた今となつて、改めて草吉の胸を流れたものは、ひややかな一つの悲しみであつた。
たうてい医しがたく割切りがたい苦汁のやうな哀愁であつた。
草吉がはじめて便所の戸をひらいたとき、さうしてそこに当太郎の屍体を見出したとき、彼の胸をまづ流れたものは、ここにも一人の愚かな奴、それがまさしく便所の中にころがつてゐるやうに一匹の息絶えた巨大な蛆虫、さうして、なんといふうるさい出来事であらう、といふ考へだつた。
ところが当太郎の生き返つた今となつて、改めて草吉の胸を流れたものは、ひややかな一つの悲しみであつた。
たうてい医しがたく割切りがたい苦汁のやうな哀愁であつた。