足の速まるにつれて、まさ子の瞼には涙が滲んできた。
たうとう堪まらなくなつて、まさ子はひとり駈けだした。
お兄さんといふ小さな必死の呟きが、顔ごと吹きちぎつてしまふやうな荒々しい潮風に鋭くさらはれたのを境ひにして、跳ねかへつて砂上に置き残された足駄には見向かうともせず、一方の足駄は夢中のうちに激しくあとへ脱ぎのこしておいて、跣足となつてせつなげに走りはじめていつた。
足の速まるにつれて、まさ子の瞼には涙が滲んできた。
たうとう堪まらなくなつて、まさ子はひとり駈けだした。
お兄さんといふ小さな必死の呟きが、顔ごと吹きちぎつてしまふやうな荒々しい潮風に鋭くさらはれたのを境ひにして、跳ねかへつて砂上に置き残された足駄には見向かうともせず、一方の足駄は夢中のうちに激しくあとへ脱ぎのこしておいて、跣足となつてせつなげに走りはじめていつた。