「葉子を確実に占領したといふ意識に裏書きされた木部(独歩)は、今までおくびにも葉子に見せなかつた女々しい弱点を露骨に現はし始めた。
後ろから見た木部は葉子には取り所のない平凡な気の弱い精力の足りない男に過ぎなかつた。
筆一本握ることもせず朝から晩まで葉子に膠着し、感傷的な癖に恐ろしい我儘で、今日々々の生活にさへ事欠きながら、万事を葉子の肩に投げかけて、それが当然な事ででもあるやうな鈍感なお坊ちやん染みた生活のしかたが、葉子の鋭い神経をいら/\させ出した。
「葉子を確実に占領したといふ意識に裏書きされた木部(独歩)は、今までおくびにも葉子に見せなかつた女々しい弱点を露骨に現はし始めた。
後ろから見た木部は葉子には取り所のない平凡な気の弱い精力の足りない男に過ぎなかつた。
筆一本握ることもせず朝から晩まで葉子に膠着し、感傷的な癖に恐ろしい我儘で、今日々々の生活にさへ事欠きながら、万事を葉子の肩に投げかけて、それが当然な事ででもあるやうな鈍感なお坊ちやん染みた生活のしかたが、葉子の鋭い神経をいら/\させ出した。