「貪婪陋劣な情慾を貧弱な体質で表はさうとする光景を目に浮べると、嘔吐を催しさうな気持がした。
「青春の恋」と言つて、詩に唄はれたり小説に描かれたりしてゐるのを読むと、いかにも美しさうであるが、その正体は概して貧弱であり、醜悪ででもあるらしい」といふ件りまでは正宗式逃避性の然らしむるところとして、まづよろしいが、次に「獅子の如く豹の如き肉体を具えた猛獣の「青春の恋」は、想像しても壮観である」なぞとせゐぜゐ凄さうなことを言ひだすのも、種を明せば中味は何もないのであつて、この空想的思弁家が自分の逃避的な人生態度にあきたらなくなつて、ちよつと色気をだし空景気をつけてみたまでにすぎない。
貧弱な肉体の情慾が醜く、猛獣の性慾が壮観であるといふ、かういふ少年の空想のやうな、たわいのない思弁家的美意識が私には鼻持ちならないのだ。