のみならず、飾らず偽らざるが故に救はれた安息者の静かな姿があるかと言へば、なか/\もつてさうではない。
悩むべきを悩まざるところの、一途の毒々しさがあるばかりである。
いはば自分の行為を全て当然として肯定し、同様に他人のものをも肯定し、もつて他人にも自分の姿をそのまま肯定せしめやうとする、肯定といふ巧みな約束を暗に強ひることによつて、傷や痛みを持ちまいとする、揚句には内省や批判さへ一途に若々しい未熟なものと思はしめやうとする、「旅日記」一篇の底に働く徳田氏の作家的態度といふものは、これ以上の何物でもないのである。