正宗白鳥氏であつたか、日本人が和臭を嫌ふのは不当であると言はれてゐたやうだが、和臭といつても、古人の文章に匂つてゐる斯ういふ「意気な心掛け」を嫌ふのであつてみれば、尤千万なことだと思はずにゐられない。
一口に西欧を「バタ臭い」といふが、年老いて尚脂つこく毒々しい体臭を放つといふ意味でもあるなら、バタ臭いことこそ作家のとるべき道であらう。
年をとると物分りが良くなるといふので急に他人のことを考へ、慾がなくなるなぞといふ納まり方は信用できぬ、人間生きるから死ぬまで持つて生れた身体が一つである以上は、せいぜい自分一人のためにのみ、慾ばつた生き方をすべきである。