とある屋根裏に棲んでゐたといふのであるが、東京には欧羅巴の安宿なみの屋根裏なんぞ見当らないといきりたつ性質のよろしくない読者のためには、BON!
それでは地下室に棲んでゐたと言ひかへてみても一向私の差支えはないのであつて、要するに尊厳なる弁護士事務所といふものは普通地下室や屋根裏の中にある筈がない――ところが尊厳なる弁護士・椋原孔明氏は屋根裏(どつこい地下室)に棲んでゐたといふわけであり、つまり話はただそれだけのことにすぎない。
さて、尊厳な弁護士・椋原孔明氏は、ひとつの穏やかならぬ(――と私は思ふが、勿論穏やかなことであつても一向私にさしさわりはないのであるが――)事情によつて、大枚三千円といふ聞いただけでも身顫ひのでる金策に苦しみはじめた。