蒲原氏は呪文のやうな奇妙なことを言ひかけて、愈々なにか重大なことを言ひだすやうに見えたのだが、そこまで言ふともはや堪らなくなつたものか、突然くるりと振向いて、さらに激しく泣くためのやうに自分の寝室へ走つていつた。
その悲惨とも滑稽とも言ひやうのない後ろ姿が魚則の目に焼きのこつて、病も癒え、幻覚も去つたのちにも、なほ永遠のやうに離れなかつた。
そんなことがあるかと思ふと、あべこべに、魚則が失踪したり魚則の自殺未遂があつたりしても、ふだん通り朦朧として殆んど驚きを表はさなかつた。
蒲原氏は呪文のやうな奇妙なことを言ひかけて、愈々なにか重大なことを言ひだすやうに見えたのだが、そこまで言ふともはや堪らなくなつたものか、突然くるりと振向いて、さらに激しく泣くためのやうに自分の寝室へ走つていつた。
その悲惨とも滑稽とも言ひやうのない後ろ姿が魚則の目に焼きのこつて、病も癒え、幻覚も去つたのちにも、なほ永遠のやうに離れなかつた。
そんなことがあるかと思ふと、あべこべに、魚則が失踪したり魚則の自殺未遂があつたりしても、ふだん通り朦朧として殆んど驚きを表はさなかつた。