その悲惨とも滑稽とも言ひやうのない後ろ姿が魚則の目に焼きのこつて、病も癒え、幻覚も去つたのちにも、なほ永遠のやうに離れなかつた。
そんなことがあるかと思ふと、あべこべに、魚則が失踪したり魚則の自殺未遂があつたりしても、ふだん通り朦朧として殆んど驚きを表はさなかつた。
ところがさういふ荒々しい出来事が過ぎ去つて平和が戻つてきてからの一日のこと、べつに用はなかつたのだが何心なく秋蘭が父の書斎へはいつてみると、蒲原氏は珍らしく書き物をしてゐた。
その悲惨とも滑稽とも言ひやうのない後ろ姿が魚則の目に焼きのこつて、病も癒え、幻覚も去つたのちにも、なほ永遠のやうに離れなかつた。
そんなことがあるかと思ふと、あべこべに、魚則が失踪したり魚則の自殺未遂があつたりしても、ふだん通り朦朧として殆んど驚きを表はさなかつた。
ところがさういふ荒々しい出来事が過ぎ去つて平和が戻つてきてからの一日のこと、べつに用はなかつたのだが何心なく秋蘭が父の書斎へはいつてみると、蒲原氏は珍らしく書き物をしてゐた。