各々の家に各々の炉があるやうに、信濃の山里の家毎に炉とささやかな生活と、さうしてあの貧乏徳利もあつたのだ……」
新らたに栗谷川浩平を加へた車は一線に長野へ向けて走つていつた。
蒲原氏はめつたに外出することもなかつたので、はじめのうちは物珍らしげに窓外の景色に見惚れてゐたが、礁氷峠にかかつた頃は完全に疲れて、重畳たる山また山の新鮮な緑にも殆んど見向きもしなかつた。
各々の家に各々の炉があるやうに、信濃の山里の家毎に炉とささやかな生活と、さうしてあの貧乏徳利もあつたのだ……」
新らたに栗谷川浩平を加へた車は一線に長野へ向けて走つていつた。
蒲原氏はめつたに外出することもなかつたので、はじめのうちは物珍らしげに窓外の景色に見惚れてゐたが、礁氷峠にかかつた頃は完全に疲れて、重畳たる山また山の新鮮な緑にも殆んど見向きもしなかつた。