蒲原氏はがつかりしたが、山の娘がかうも卑下するほど、あの貧乏徳利が彼等の暗澹たる土まみれの生活そのものの中に共々せつない感情を通はせて存在しつづけてゐるのかと思ふと、その芸術品としての品格が一層高度のひろいしみじみとした感傷をともなうて胸にせまつてくるやうでどうやら徳利の現実の相をはなれて、蒲原氏の持つて生れた夢のなかに通ひはじめ、そこにはるばると生育しはじめたやうであつた。
桜枝町から踵を返して、もうすこし目貫の通りで一二の骨董店めいたものを覗いてみたが、それらしいものは見当らなかつた。
それに二百数十キロの道程を自動車に揺られ通してきたのだから蒲原氏も疲労困憊しきつてゐて、そのせゐか骨董店の店頭へ立つてもひどく物憂い様子をするばかりで、愉しい物を探すやうな喜びの影は殆んどなく、しまひには骨董店をまはる根気も尽き果てた様子であつた。