それに二百数十キロの道程を自動車に揺られ通してきたのだから蒲原氏も疲労困憊しきつてゐて、そのせゐか骨董店の店頭へ立つてもひどく物憂い様子をするばかりで、愉しい物を探すやうな喜びの影は殆んどなく、しまひには骨董店をまはる根気も尽き果てた様子であつた。
二軒目の骨董店でそこにも徳利のないことが分つたとき、たうとう蒲原氏は物も言はずただフラフラと店頭をはなれて、暗い方へ暗い方へとまるで暗闇の奥へ大きな力で引かれるやうにスタスタ歩きこんでいつたが、突然後ろを振向いて、ウロウロと騒ぐ視線で浩平の様子を見まもりながら、
「あの、戸隠山は近いのですか?