蒲原氏は打ちしほれて、おづおづと部屋へ這入つてきたが、魚則の顔も見るか見ないにおおと幽かに喉の奥に呻いたきりで、目をまるくして孔のやうな視線を迷はせ、ただベッタリと崩れるやうに坐りこんでしまつたのだつた。
改まつた感情を顔に浮べて今にも何事か言ひだしさうな気勢だつた魚則も、父親の朦朧として樽のやうなだらしなさには度胆をぬかれ、やつれた顔をひきつらせて思はずクツクツと笑ひだしてしまつたのだ。
そこで蒲原夫人は、意気銷沈の蒲原氏を迎へた一座に活気を与へるためもあつたが、かねて心に期してゐたところでもあつたので、