さういふ言葉でも大体の予想はつくのだが、行つてみると成程へんてつもない所で、なんとなく薄暗い感じのする小さな部落の片隅に、池といふよりは水溜りとよぶにふさはしいものがあつて、水の色も見えないくらゐ葦の密生するところがそれであつた。
名所旧跡といふやうな厳めしい目印しは何一つなく、近隣の風景に比べると特別みすぼらしい薄汚い湿地で、わざわざ行つてみる奴が莫迦にされた感じであるが、全てに置きすてられた山底の部落では伝説も亦置きすてられて荒廃のままにまかされ、いはば伝説のもつ遥かな悲しさにつながるものが、現に静寂な山気をおびて、さまよひ流れてゐるやうな、思へば遥かな傷心も蒲原氏の心の奥をすぎたのであつた。
この散策に際してまづ一行を驚かした一つのものは、部落々々にたむろする子供等が、一行をめがけて敬礼を怠らないことであつた。