すでに薄明がたれこめ、山々は暗紫色に溶けはじめて夜のさなかへ消え落ちようとする頃であつた。
温泉部落を出外れて谷川を渡り終つたところから、間道とおぼしい小径をことさら選んで激しい傾斜を登つて行くと、やがて山岸へ現れて、そこから見晴らしのひらけた尾根伝ひの径が走つてゐた。
谷はすでに暗闇の底に沈み落ち、はるか下から、ほのぐらい靄の塊りが湧いてゐたが、空には幽かな明るさが残つてゐた。
すでに薄明がたれこめ、山々は暗紫色に溶けはじめて夜のさなかへ消え落ちようとする頃であつた。
温泉部落を出外れて谷川を渡り終つたところから、間道とおぼしい小径をことさら選んで激しい傾斜を登つて行くと、やがて山岸へ現れて、そこから見晴らしのひらけた尾根伝ひの径が走つてゐた。
谷はすでに暗闇の底に沈み落ち、はるか下から、ほのぐらい靄の塊りが湧いてゐたが、空には幽かな明るさが残つてゐた。