その物腰はあくまで自由で、男女混浴の浴室の中で隠すべきところを隠さうともせず、のびのびと歩きまはる様子には羞ぢらふ固さもないばかりか、強ひてする厭味なきつさもないのであつた。
その振舞を見るにつけ、黄昏の山径へ夢のやうに降りてきた、あの野生の羚羊を思はせる仕事帰りの農婦等の、仕事着の下に、脚絆・手甲・もんぺの下に軽々と律動的に動いてゐたその肉体は丁度銅色の娘のやうであらうかと思ひ、銅色の娘に山の農婦の仕事着をきせて、見た眼には手とも腰とも肩ともつかぬ一点に於て軽々と調子をとつて歩いてゆく、そのなまめかしい山中の多彩な色情を空想すると、蒲原氏は気を失つてしまふやうな、然し甚だ軽快な、深い眩暈を覚えたりした。
顔馴染になるうちには、おのづと挨拶を交すやうなことにもなり、旦那はまあ東京の方ですとの、といふやうな身の上話に類似のことも言ひあつたりして数度の機会があるうちに、蒲原氏はたうとう抑へきれなくなつて、銅色の娘に向ひ、あの、あなた方はここから帰るとやつぱり山や畑や森林へ仕事にでかけて行くのですか、ときいた。