温泉へ着くと男の一隊は汗を流しに下の浴室へ降りていつたがもう黄昏れて、白昼も薄暗い浴室の中には深い暗闇が澱んでをり人の姿は全くなかつた。
銅色の女達に会ふことを窃かに予期してゐたらしい蒲原氏は、余りにもひつそりした暗闇になんとなく実に相違の面持であつたが、突然連れの二人を向いて、してみるとあれはあの女ではないだらうかと呟いた。
勿論有りさうにもない話であつて、二人の若者は妄想の発展ぶりに哄笑するし、蒲原氏も赧らんだが、然し蒲原氏の脳裡には、銅色の光沢を放つすくすくとのびた肉体の、歓喜に酔うて叢の中を逃げて行く溌剌たる躍動を空想すると、胸にせまる熱い流れに打たれずにゐられなかつた。