自動車から降されてみると、まるで棄てられたやうな悲しさで、深まる哀愁のせつなさのみが全てのものを、眠つた家を、街を灯を、ひたひたと貫き流れて感じられた。
歩くうちに一軒の居酒屋をみつけて暖簾をくぐつた。
白粉くさい年増女を相手にして酒をくむと、酔ひがただ専すら快適に溢れるばかりで、むやみに快よく、興趣つきるところを知りがたい有様で、年増女を相手にして溢れでる感慨を歌ふがやうに喋りつづけてゐたのであつたが、やがて嬌声に送られて眠つた夜道へ降りてみると爽やかな沁みるがやうな哀愁はなほ森々と深まりゆくばかりであつた。