乗合に乗つてただ茫然と温泉へ帰ると、そこでは残された一行が宿屋ともども大騒ぎを演じてゐたが、自分のしでかした行動の結果に一片の反省も思ひ至らぬ面持で朦朧と舞ひ戻つた蒲原氏が、ポツポツ語りだすあらましの事情をきいて、張りつめた気が一時に弛んだ一同はゲタゲタと笑ひだすほかに仕方がなかつた。
そこで一行は予定の通り自動車を命じ、昨夜は蒲原氏が紅涙のしたたる愁ひに沈湎した十日町へと一路走つて、そこから十日町線に乗るのであつたが、椿事の生々しい古戦場を通過した一行は心あくまで和やかに歓声をあげ、汽車は沸きたつ笑ひをつつんで走りはじめたのであつた。