そもそもの始まりから他人の家へ無断でのこ/\這入りこんでくるなんて、策の斬新奇抜なところは大いに買ふが、安寧秩序をみだし良良なる風俗を害ふ底の人騒がせは許しがたい悪徳であるなぞと途方もないことが書いてあつたよ。
文章の様子から見て若い書生の筆らしいが、女名前の主人といひ、その家はてつきり素人下宿と思はれるのだ。
してみると愈々てれくさい話になるわけで、なんとかして敵の蒙を啓き身の潔白を立てる方策を講じないことには、うかうかあの界隈を散歩もできない窮地にたちいたつた次第だが、そこで俺は手紙を書いた」