紫式部に就いて、その詳細な伝記が新らたに発見せられたところで、源氏物語の芸術価値が高まらうとは思はれませんし、あるひはまた、あの物語が、竹取物語や浜松中納言物語などのやうに作者不明であつたにしても、その価値が減じやうとは思はれません。
尤も、僕達は文学の商売人ですから、先人の残した傑作の単なる読者で終ることができないのは、申すまでもないことです。
作者の伝記や性格を調べて、発想法や構成法を知り、自分の役に立てることが必要なのは、ここに改めて断はることが野暮なのですが、公開の文章ですから、我慢して下さい。