若い時に旅をせねば、老いて物語がないといふ、勿論さきほどの十三の娘の等身の薬師仏をつくり、それに祈つてまであまたの物語が見たいといふ、その物語とは異り、単に話の種といふほどの意味でありませうが、皆人の仰せらるるには、若い時に旅をせねば、老いて物語がないと仰せらるるにより、俄に旅にでたといふ滑稽な独白を読むたびに、土民の感情に生きてゐるあたたかい生き甲斐の悲しさに打たれ、ほのかな明るい放心を覚えずにゐられなかつたのでありました。
薬師仏にぬかづいても読みたいといふあの物語この物語。
いづれはそれらも物語といふからには、元来物語られたものであつたには相違ありますまい。