中にはスタンダールなんといふ感激好きの騎士もゐて、メチルドなどいふ夢の観音をでつちあげて、その精神も芸術も常に高められてゐるやうな誇大なことを好んで言ひふらしてゐるのですけど、さうして実は僕もさういふ嘘つぱちな感動を言ひふらすのが好きなんですけど、実際は――君はにや/\笑ひだしてゐるやうですね。
実際は、感激したり力んだりしてみても、いざ実際に作品となれば、そんな魔術は薬九層倍ほどの御利益もありません。
薬師仏にぬかづいてあまたの物語をみせたまへと念じた乙女は、十三の年京にのぼり、思ひの通り数々の物語を読むうちに、いつとなく物読むことからも遠くなり、「辛うじて思ひよることは、いみじくやんごとなきかたちありさま、物語にある光源氏などのやうにおはせむ人を、年に一度にても通はし奉りて、浮船の女君のやうに、山里にかくし居ゑられて、花、紅葉、月、雪ながめて、いと心ぼそげにて、めでたからむ御文などを、時々待ち見などこそせめとばかり思ひつづけ」るやうな年頃になります。