この作品の強味もこゝにあり、また最大の弱点もこゝにあるのだと僕は思ふ。
これに就いて、思ひ出したひとつのことがある。
死んだ嘉村礒多氏は殆ど社会と没交渉な生活を送り、肉親達と又特に妻君とのせまい交渉の内部だけで執拗に内省しながら筆を執つてゐた人であるが、従而、その夫婦生活がいはば必死で縋り合つてゐるかのやうに親密無二であつたらしい、嘉村氏の死後、その妻女の良人の追想など哀切で、至高の貞女をしのばせるものがあつた。
この作品の強味もこゝにあり、また最大の弱点もこゝにあるのだと僕は思ふ。
これに就いて、思ひ出したひとつのことがある。
死んだ嘉村礒多氏は殆ど社会と没交渉な生活を送り、肉親達と又特に妻君とのせまい交渉の内部だけで執拗に内省しながら筆を執つてゐた人であるが、従而、その夫婦生活がいはば必死で縋り合つてゐるかのやうに親密無二であつたらしい、嘉村氏の死後、その妻女の良人の追想など哀切で、至高の貞女をしのばせるものがあつた。