即ち長男の重責と才能との不均衡のために、逃避難とひねくれた精神生活を植えつけられた藤村家の当主治右衛門、好人物で好色な二男辰二郎、傲岸不屈な末弟真吾、この兄弟の性格とその交渉は藤村商店といふ大機構をめぐつて特色深い人生図を展開する。
青春を謳ふ代りに憎み、結婚初夜に、身体は買つたが精神上の結婚はせんと堂々花嫁に宣言する真吾の性格は、一見甚だ観念的で異国風なものに見えるが、治右衛門、辰二郎と並べて見ると、その外部的な表出はとにかくとして、日本の豪家の一族には、却つて甚だ有り易い型ではないかと思はれる。
さうして、これら三兄弟の性格の関係自体がまた甚だしく日本的だ。