だが、一見粗雑を極めてゐる文章によつて語られてゐる各々の事柄は、いづれも天分ある人のすぐれた、洞察のみがなしうるもので光り輝く意味を持つてゐるのである、元来小説は綴方と異つて、如何に書くか、といふことよりも、何を書くか、といふことがより重大な意味をもつ、複雑無限な人生の事象の中から、狙ひをつけ、取りあげてくる事柄自体が、まづ小説の文章の価値を決定する。
文章としての形や調子が揃つてゐても名文とは言へないのである。
『フライムの子』は綴方としては悪文だが、小説としては近来稀な名文だつた。
だが、一見粗雑を極めてゐる文章によつて語られてゐる各々の事柄は、いづれも天分ある人のすぐれた、洞察のみがなしうるもので光り輝く意味を持つてゐるのである、元来小説は綴方と異つて、如何に書くか、といふことよりも、何を書くか、といふことがより重大な意味をもつ、複雑無限な人生の事象の中から、狙ひをつけ、取りあげてくる事柄自体が、まづ小説の文章の価値を決定する。
文章としての形や調子が揃つてゐても名文とは言へないのである。
『フライムの子』は綴方としては悪文だが、小説としては近来稀な名文だつた。