山の伝説の主要なものは、空想的なものでは狐狸妖怪、現実的なものでは、鬼山賊のたぐひであるが、馬琴のやうな近世の碩学でも狐狸妖怪の伝説を真面目に書いてゐるのであつた。
「みな土俗の口碑に遺す昔物語にして、今は彼老狸を見たるものなしといへば、あるべきことならねど、童子の為に記すのみ、しかるやいなや、はしらず」
こんな風な断りがきはしてゐるが、伝説の紹介ぶりは、証人の名をあげたり、御丁寧に地図まで載せて、決して「童子の為に」しるしてゐるやうな様子ではないのである。
山の伝説の主要なものは、空想的なものでは狐狸妖怪、現実的なものでは、鬼山賊のたぐひであるが、馬琴のやうな近世の碩学でも狐狸妖怪の伝説を真面目に書いてゐるのであつた。
「みな土俗の口碑に遺す昔物語にして、今は彼老狸を見たるものなしといへば、あるべきことならねど、童子の為に記すのみ、しかるやいなや、はしらず」
こんな風な断りがきはしてゐるが、伝説の紹介ぶりは、証人の名をあげたり、御丁寧に地図まで載せて、決して「童子の為に」しるしてゐるやうな様子ではないのである。