芥川龍之介によつて河童が現代に復活したのは異例で、我々の祖先は、妖怪味深く陰性の狐については多くの劇や物語を残してくれたが、狸と河童は文学の対象にならなかつた。
狸についてはカチ/\山がひとつの主要な物語にすぎないのだが、こゝでは狸の滑稽な面がいささかも取扱はれてゐない。
のみならず、兎の義侠的な復讐によつて勧善懲悪のモラルは一応具備してゐるのだが、狸が婆を殺し汁にして翁にすゝめるといふ物語の主点だけでは、凡そ日本の物語中最も惨忍極まるひとつで、シャルル・ペローの童話「赤頭巾」にモラルがないので文学の問題に取上げられてゐるのと好一対をなすもの、狸のためには甚だ気の毒なことなのである。