元来一般の家庭生活といふものは、閾をまたいで外へ出ても隙だらけ油断だらけの分際で、尚その上に女房子供と特殊地域を設定して、ここでは唯もう油断の仕放第、デレ放第に沈湎し、いやが上にも厭世的に生きようといふ仕組なのである。
押売などに顫へあがつてこれを三日分ぐらゐの話題にし、こんなことを生甲斐にしてやうやく露命をつないだり、一匹のなめくぢ風情に悲鳴をあげて井戸端会議に持越してゐる。
所在なさに掴みあひの喧嘩はするし、女房子供の前でだけは世界で相当の人物のやうなことも言ふし、礼義節度といふものは影も形もとどめてゐなくて、腹蔵なく油断しあひ、いい気になつて人たるものの本分を忘れてゐる。