然るに彼等は夜が明けてラヂオ体操が始まりおみをつけの匂ひなど漂ひはじめる頃になると、忽ち大事の心得をみんな忘れて元の木阿弥になつてしまふ。
朝つぱらから電車の中で隣人の肩にもたれてグウグウ眠り、余念もなく新聞を読み、三分たてば次のバスが発車するのに無我夢中で走つて折から横手から疾走して来た自動車にひかれ、それまでの人生となつてしまふ。
会社へつけばオイ子供お茶をもてなど威張り返つてお湯がぬるいなど難癖をつけ忽ち生涯の禍根をつくり、さて又相好くづして恋人の手を握つたりセンチなシャンソン唄つたり、夜ともなれば虎となつたり月を眺めて嘆息したり、全然筋道の立たない風に八方油断にふけつてゐる。